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はじめに:年末調整を「形式的な作業」で終わらせていませんか?
年末が近づくと多くの会社員の方が手にする「年末調整」の案内。
毎年書類を提出しているものの、「正直よく分からないまま出している」「思ったより還付金が少なかった」という声も少なくありません。
しかし、年末調整は単なる事務手続きではなく、“自分の家計を見直す絶好のタイミング”です。
特に、生命保険料控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)の扱い方次第で、手取りや将来の資産形成に大きな差が生まれます。
今回は、一期コンサルティングのファイナンシャルプランナー(FP)が、実際の相談事例や現場の声をもとに、「年末調整の還付金が少ない理由」と「見落としを防ぐために押さえておきたいポイント」を解説します。
1. そもそも年末調整とは?確定申告との違い

まず押さえておきたいのが、年末調整=給与所得者向けの簡易的な確定申告という点です。
給与から毎月天引きされている所得税は、あくまで“概算”。
年末に一年間の所得や控除額を正確に計算し直すことで、払い過ぎた税金が「還付金」として戻ってきます。
ただし、次のような支出については年末調整では反映されず、確定申告が必要です。
●医療費控除(年間10万円超の医療費)
●ふるさと納税(ワンストップ特例を除く)
●雑損控除・寄附金控除 など
つまり、年末調整だけでは完結しない控除項目もあるということを理解しておきましょう。
2. 還付金が少ない主な理由
(1)控除を申告し忘れている
年末調整の基本は「控除の申請」。
中でも代表的なのが以下の3つです。
●生命保険料控除(一般・介護医療・個人年金)
●小規模企業共済・iDeCo掛金控除
●扶養控除・配偶者控除
これらの書類を提出し忘れたり、証明書を紛失したりしていると、本来受けられる控除が反映されず、還付金が減ってしまいます。
年末調整は、“控除を正しく使えているか”を確認する場です。生命保険料控除には一般・介護・年金の3区分がありますが、意外と全て活用できていない方も多いのではないでしょうか。小規模企業共済(iDeCo)も同様で、きちんと会社を通じて計上できているかの確認が必要です。
(2)扶養や住所変更など、最新情報を反映していない
配偶者やお子さんの扶養状況、住所変更、結婚・出産といったライフイベントの変化を届け出ていない場合も要注意です。
扶養の問題、つまり“誰を扶養に入れているか”が正しく更新されていないケースは多く見受けられます。子どもの人数や住所の変更なども、会社の年末調整書類で再確認が必要です。
家庭環境の変化をそのままにしていると、控除漏れが発生しやすく、還付金が少なくなる原因になります。
(3)年末調整で完結しない控除を勘違いしている
「ドラッグストアで薬を買ったから医療費控除がある」「ふるさと納税をしたから還付されるはず」と思っている方も多いですが、これらは年末調整では処理されません。
●医療費控除・ふるさと納税は「確定申告」が必要
●年末調整で反映されるのは「保険料控除」や「扶養控除」など
つまり、「還付金が少ない」と感じる背景には、手続きの範囲を誤解しているケースも多いのです。
3. iDeCoや保険を見直すチャンスでもある
年末調整は、「自分がどんな保険に入っているのか」「どんな制度を利用しているのか」を振り返るタイミングでもあります。
会社員の方なら、iDeCoや企業型DCの扱いを確認しておくことが大事です。もし転職などで企業型DCがなくなった場合、個人型iDeCoで掛金を継続できるかをチェックしておく必要もあります。
また、保険の証明書を提出する際に、今の保険が本当に必要か・内容を理解しているかを見直すきっかけにもなります。
年末調整をきっかけに、『あれ、自分の保険って何に入ってたんだっけ?』と気づく方も多いです。もし保険内容に疑問を感じたら、そのタイミングで専門家に相談・見直しをすることも重要です。
4. 「還付金」よりも大切なのは“家計全体を整えること”

還付金の額そのものに一喜一憂する必要はありません。
大切なのは、「自分がどんな制度を活用し、どんなお金の流れを作っているか」を把握することです。
「やるだけで何万円も戻ってくる」というよりは、正しく仕組みを理解して手続きすれば、本来受けられるメリットをきちんと受け取れる――それが年末調整のポイントです。
還付金が少ない=損している、というわけではありません。
むしろ、月々の給与天引きが適正に行われている証拠でもあります。
年末調整を「お金が戻るイベント」として捉えるのではなく、
“自分と家族のライフプランを見直す機会”として活用することが何より重要です。
5. まとめ:年末調整をきっかけに「お金との向き合い方」を見直そう
還付金が少ない理由は、
「控除の申告漏れ」や「制度の誤解」によるものがほとんどです。
けれども、本当に重要なのは“還付額”ではなく、“未来のお金の設計”です。
年末調整のタイミングを活かして、
●自分の保険・iDeCoを見直す
●扶養や控除内容を確認する
●家計全体のバランスを点検する
そんな「未来につながる習慣」を持つことが、賢く生きる第一歩です。
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【監修者情報】

[監修者名] (株)一期コンサルティング ファイナンシャルプランナー 廣瀬秀人
[資格] AFP(日本FP協会認定)/2級ファイナンシャルプランニング技能士/公的保険アドバイザー/住宅ロ-ンアドバイザー/キッズマネースクール認定講師
[経歴]
2005年~(株)ビジネス情報社
2008年~ジブラルタ生命保険(株)
2012年~(株)一期コンサルティング
[専門分野] ライフプランニング/教育資金相談/老後資金相談/住宅資金相談/資産運用/保険相談/
※ 注意
この記事は、一般的な情報を提供することを目的としており、特定の商品やサービスを推奨するものではありません。
個別の状況については、専門家にご相談ください。



